介護業務の見える化から始める業務改善の手順とコツ
はじめに
介護現場で日々忙しく働いていると、「なぜこんなに時間がかかるのか」「特定のスタッフだけが疲弊している」「業務が非効率に感じるが、どこがどう非効率なのかわからない」という課題に直面することがあります。こうした問題を解決するためには、まず業務の「見える化」から始めることが大切です。本記事では、工程表を活用した介護業務の見える化と改善の手順について、夜勤業務を例に具体的に解説します。
目次
- 介護業務改善が必要なケース
- 業務改善の第一歩:見える化の手順
- 工程表の作成方法
- 工程表で見えてくる課題
- 詳細工程表による深掘り分析
- PDCAサイクルで継続的改善
- 工程表作成時の注意点
- まとめ:小さな一歩から始める業務改善
介護業務改善が必要なケース
以下のような状況に直面したとき、本記事で紹介する業務改善手法が効果的です:
- 特定の業務が特に忙しく、時間がかかっている
- なぜそれほど時間がかかるのか理由がわからない
- 一部の職員だけが疲弊している
- 業務手順が非効率に思えるが、どこがどう非効率なのかわからない
こうした課題に対して、工程表を使った「見える化」から始めることで、効果的な改善につなげることができます。
業務改善の第一歩:見える化の手順
業務改善の第一歩は「見える化」です。具体的には、次の3つのステップで進めます:
- 現状の業務データの収集:現場の職員または業務改善リーダーが現場を観察しながら、現状の業務に関するデータを収集します。
- 工程表の作成:何時に、誰が、どの場所で、どのような業務をしているのか、どのような流れで実施しているのかを表にまとめて、業務実態を可視化します。
- 課題と解決方針の検討:作成した工程表から課題を洗い出し、解決方針を検討します。
この3つのステップを踏むことで、業務の実態が明確になり、改善すべきポイントが見えてきます。
工程表の作成方法
工程表は、以下の項目を記入して作成します:
- 業務名
- 実施している人
- 実施人数
- 実施時間帯
- 所要時間
- 頻度
- 実施場所
- 業務目的
- 業務の流れ
- 使用ツール
- 兼務の有無
- 課題・気づき
- 改善予知
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全ての項目を記入するのが難しい場合は取捨選択しても構いませんが、業務名、実施人数、業務の流れ、課題・気づきなどの重要項目は漏れなく記載するようにしましょう。
夜勤業務の工程表例
夜勤業務を例にした工程表では、以下のような流れを記録します:
- 夕方の申し送り
- 夕食介助
- 服薬確認
- 排泄介助
- 就寝準備
- 巡視
- 記録
- 休憩・仮眠交代
- 巡視
- 記録
例えば、「就寝準備」の工程については次のように記載します:
- 実施者:Aさん、Bさん
- 実施時間帯:20:30〜21:00(30分間)
- 実施場所:居室
- 業務目的:安眠の環境づくり
- 業務の流れ:声掛け → 着替え支援 → 照明調整
- 使用ツール:シーツの準備、NASコール対応など
- 課題・気づき:利用者の着替えに個人差があり、時間がかかる
- 改善余地:就寝時間の調整をより柔軟にする
このように、各工程について詳細に記録することで、業務の実態が見えてきます。
工程表で見えてくる課題
工程表を作成することで、以下のような課題が明らかになります:
- 時間の偏り:特定の業務(例:排泄介助)に時間がかかり、他の業務にしわ寄せが生じている
- 業務の順番の不合理:例えば、記録をまとめた後に利用者の状態変化があり、再度記録に戻る必要がある
- 業務の偏在:特定のスタッフに記録や介助が集中している、休憩が偏っている
- 業務の重複・抜け:巡視の記録が二重になっている、または記録されていないことがある
これらの課題が見えてくることで、「なぜこの順番でやる必要があるのか」「この業務はこんなに時間がかかっていたのか」という気づきが生まれ、改善のアクションにつながります。
詳細工程表による深掘り分析
工程表の分析から、特定の業務の負荷が大きいことが判明した場合は、その業務についてさらに詳細な工程表を作成して分析を深めることが効果的です。
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例えば、夜勤業務の中で「排泄介助」に時間がかかっていたり、ヒヤリハットが発生していたりする場合、排泄介助の業務をさらに細かく分解します:
- 声掛け・確認
- トイレ誘導
- 衣服の着脱支援
- 排泄支援
- 拭き取り
- おむつ・パッド交換
- 衣類を戻す
- ゴミ処理
- 記録記入
この詳細工程表においても、各ステップの実施者、時間、場所、流れ、課題・気づき、改善余地などを記入します。例えば、「トイレ誘導」のステップで「移動時の転倒リスクが高い」という課題が見つかれば、「誘導の動線を工夫する」「歩行補助具の使用方法をマニュアル化する」などの改善策を検討できます。
PDCAサイクルで継続的改善
業務改善は一度きりで終わるものではなく、PDCAサイクルを回して継続的に行うことが重要です:
- Plan(計画):業務の流れを工程表として可視化し、非効率な部分や問題がある部分を見つける
- Do(実行):課題の原因を分析し、改善策を実施する
- Check(評価):改善した結果、業務の流れが良くなったか、新たな問題はないかを確認する
- Act(改善):評価結果をもとに、さらなる改善を行う
このサイクルを繰り返すことで、業務はどんどん改善されていきます。また、工程表がチームの共通言語となり、効率的な業務改善につながります。時間短縮や負荷分散などの成果も工程表のブラッシュアップを通じて見えるようになり、スタッフのモチベーション向上にもつながります。
工程表作成時の注意点
工程表を作成する際には、以下の点に注意しましょう:
- 完璧を求めすぎない:最初はざっくりでもOK。改善を重ねながら精度を上げていきましょう。
- 空白時間も含めて記録する:休憩時間も含め、どのような時間の使い方をしているかを見える化することが重要です。
- 現場職員を巻き込む:現場の職員と一緒に工程表を作成し、みんなで意見を出し合って課題を見つけることで、納得感のある改善活動になります。
- 改善後の工程表も明文化する:改善後の業務手順や工程表はしっかりと文書化して残しておくことで、業務の戻りを防止できるほか、新人職員への引き継ぎや組織の知識として活用できます。
まとめ:小さな一歩から始める業務改善
介護業務の改善は、以下のステップで進めることが効果的です:
- 現状の業務の見える化:時系列で業務を書き出し、可視化する
- 課題の特定:無理・無駄・ムラやリスクポイントを見つける
- 改善策の実施:チームで話し合いながら具体的な改善を進める
業務改善は最初から完璧を目指す必要はありません。小さな一歩を積み重ねることで、着実に業務効率化と利用者サービスの質向上を実現していきましょう。
この記事が介護現場の業務改善の一助となれば幸いです。皆様の施設における取り組みのご成功をお祈りしています。